当旅館のラウンジにはピアノを置いています。
私が大学の頃から弾いているピアノです。
大学の頃は、まわりは小さな頃から英才教育を受けていて
おうちにもグランドピアノが普通にあるような環境に育っていて・・・
という人ばかりでした。
あ、私は違いますよ。
田舎の公立学校に通い、野山を駆け回り、おじいちゃんに買ってもらった
普通のアップライトピアノで、近所のピアノの先生に習っていました。
ピアノを習い始めた頃は、鍵盤が7つくらいしかないおもちゃの
ピアノで練習していたくらいですので。
バイエルが進むにつれ
「?このピアノだと弾くところが足りないなあ?」
と幼心に疑問に思っていたという。
そんな田舎でも、やはり教育熱心な親御さんはいますので
中にはグランドピアノをお持ちのお宅もありました。
「○○ちゃんのところは、グランドピアノがあるんだって。」
と聞いて、遊びに行ったこともありますよ。
学校の音楽室に置いているグランドピアノを先生に頼んで
弾かせていただいたこともあります。
たまにしか弾くことが出来なかったグランドピアノは、澄んだ良い音が響きました。
トリルも綺麗に入るし(構造上、アップライトとグランドではタッチが違います)
「こんなピアノがおうちにあったら、どんなに素敵だろう。」
と、憧れました。
「どこかにお金持ちのおじいさんとかがいて
『これは亡くなった娘のグランドピアノだが、もう誰も弾かなくなったから
あなたに差し上げよう。』とか言ってくれないかな・・・。」
と、真剣に考えてもおりました。
残念ながら、そんな奇特なおじいさんには出会うことがなかったのですが。
ときどき、ご宿泊の小さなお子様が
「ピアノを弾かせてください。」
と言います。
小さなお子様だけでなく、大人の方でもいらっしゃいます。
そんなとき、私は小さい頃グランドピアノに憧れたこととか
お友達のおうちのピアノのこと、バイエルを練習したおもちゃのピアノのこと
なんかを懐かしく思い出します。